※最終回は、来週、4月2日土曜日です。

 

夕暮れ時、部屋(寝室側)で三味線の手入れをしている新次郎。

着物姿のあさが廊下に姿を見せ、新次郎の姿をじっと観察し、隣の部屋から「旦那様。」と、声をかけた。新次郎が三味線を拭いていた手を止め、「ん?」と、あさを見上げる。言葉にする事をためらっているかのような、あさ。
じっと新次郎をみつめたまま、新次郎のそばに進んで、座り、「やっぱり、どっか、調子、お悪いのと、違いますか?」と、尋ねてみる。新次郎は無言で、三味線を拭く。

あさは「今日の朝も、あんまり食べてはれへんかったみたいだすし…。」と、心配する。新次郎は、三味線を置いて、「うん…。せやな。」と、浮かぬ顔で言って、「尼崎、行くの、やめとこかな。」と、あさに向け、微笑み、「亀助。」と、一声。すぐに、奥から「へぇ。」と返事をし、亀助が廊下に姿を見せた。新次郎は「ちょっとなぁ。尼崎の川井さんに、明日、都合悪なった、て、お伝えしといてくれへんか。また来月の会には、行くさかい、言うてな。」と、言伝をする。

亀助は一礼し、「へぇ、分かりました。商業会議所の方は?」と、尋ねた。新次郎は、手を払い、「せやな。」と言って、腰を上げ、「あっこはな、森さんに言ってな。」と、亀助と連れ立って、部屋から出て行く。亀助が、「森さん?」と、言いながら、新次郎と事務所の方へ去っていく。

あさは、不安そうな顔で、部屋から逃げるように出て行った新次郎を目で追い、考え込む。

 

ナレーション:あさの不安は、日に、日に、増していくのでした。

 

ナレーション:明治36年。2年前の恐慌を乗り越えた、加野銀行の預金残高は、右肩上がりに、増え続けていました。

 

加野銀行の窓口業務は忙しそうに、活気づいている。事務所内の応接で、顧客に挨拶している、あさと婿養子の啓介。

社長室では、平十郎と榮三郎が、保険内容について、打ち合わせ中。

 

ナレーション:また、淀川生命も、飛躍的に、契約を伸ばしていきました。

 

榮三郎は、書類を平十郎に渡し、「今ある終身保険、養老保険、開運保険のほかに、生存保険は、男子終業、女子結婚に分けたら、どないだすやろか?」と、提案。平十郎は、笑顔で「へぇ。品目が増えると、契約が取りやすくなります。いいと思います。」と、賛成。「うん。」とうなずき、歯を見せ、微笑む榮三郎。

 

夜、自室の文机に向かって、並んで座っているあさと新次郎。あさは、新聞を手に取り、ある新聞の記事に目を留め「はぁ…。見とくなはれ、これ!」と、むっとしながら、読んでいた新聞をばさっと机の上に置き、新次郎に読むようにすすめる。「ん?」新聞を手に取り、その記事を読み上げる新次郎。「<とかく(※とにかく)、女学生の堕落(だらく)は、梅に鶯(うぐいす)のごときもの>て。」と、女子学生堕落論と表題のつけられた記事を後は無言で目を通す。

あさは、「まるで、街で学ぶ、おなごの事を堕落の温床(おんしょう)みたいに、書いてありますのや。」と、悔しがり、新次郎の手から新聞を奪って、にらみつける。「もう、みんな、あないに、頑張ってる、いうのに!」と、怒りが収まらない。新次郎は、あさの手から、新聞を奪い、「ほれ。あさが怒ったかて、しょうがあれへんがな。」と、言った。あさは、また、新聞をつかみ、「そやけど、悔しおます!」と、怒り心頭。新次郎は、あさの背中に手を回し「へぇ、へぇ。」と、なで、「ほれ、よちよち、よちよち。」と、あさの両方の頬をひっぱり、あやす。

あさは「もう、子どもや、あらしまへん!」と、怒って、新次郎の右手をつかんで、頬から離し、にらむ。へへへと笑い、右手であさの背中をまた、なでる。あさは、ぷんぷん怒りつつも「そやけど…。おおきに。」と、言って、新聞を重ね、トントンと机にあて、整える。新次郎は「うん。…でぇ、今日は、日の出の学生さんたち、どないしましたのや?」と、尋ねた。

あさは、はぁと息を吐いて、「ああ。みんな、内国勧業博覧会、見に行きました。ほら、今、色電球が、きれいだすやろ?」と、言った。「ああ。あっこの茶臼山(ちゃうすやま)なんかなぁ、ちょっと前まで、キツネやタヌキもいてて、さみしいとこやったのになぁ。」と、話しかけた。はぁとあさの表情も昔を思い出して、柔らかくなり、「そないゆうたら、江戸の時分の夜は、暗(くろ)おましたなぁ。」と、笑みを浮かべ、新次郎の顔を見る。にこにこ、うなずく新次郎。

あさは「旦那様が、こう…。」と右手を伸ばし、エアちょうちんを手にしている仕草をし、「こないして、ちょうちんで照らしてくれはって。」と、笑みを浮かべ、新次郎は「ハハハッ。」と笑い、腰を浮かし、あさに寄り添い、自分もエアちょうちんを手にする仕草をし「2人でな、こないして、歩いてなぁ。」と、笑いあい「はぁ、懐かしなぁ。」と、あさを見つめ、肩を抱く、新次郎。あさが首を傾け、懐かしみながら「へぇ。」と、答えた。うなづき合って、顔を見合わせ、あの頃を思い出し、遠い眼差しをする2人。

 

和歌山。眉山家。

わらじの紐をしっかり結んで、出かける支度をしている養之助。節が弁当を手渡そうとした時、「養之助。」と、藍之助が声をかけ、振り返る養之助と節。藍之助は「お前、これから、どないする?」と、尋ねた。養之助は「どないする、て…。お兄ちゃんこそ、いつまで、いてんのや?」と聞き返した。藍之助は思いつめた顔で「この先、もう、お前一人じゃ、やっていかれへんやろ?」と、言った。養之助は、節が抱いているわが子に手を伸ばし、「お前が、すぐ大きなってくれたらなぁ。」と、明るく言って、頭をなでる。節が「アホ言うて。」と、言った。

藍之助は、うつむいて、「僕は、長男や。やっぱり、僕が、こっちに帰って…」と、思いつめた顔で養之助に言った。台所作業をしていた、はつが、きっぱり「あきまへん。」と、言った。

驚いて、はつを見る兄弟。

はつは、藍之助の方に向き直り、もう一度「そら、あきまへん。」と、言った。藍之助は、立ち上がり、泣きそうにも見える顔で、「いや、そやけど…。」と、言った。

はつは、台所から数歩離れ。「おおきにな。うちは、もう大丈夫や。山かてなぁ、半分売ったかて、かましまへんのや。一家みんなで、身の丈に合(お)うた暮らし、したら、それで、ええのや。」と、言った。うつむく藍之助。はつは、にっこり微笑んで、「みんなで、笑(わろ)て、暮らせたら…。それで、十分だす。」と、言って、養之助を見た。うなずく養之助。赤子を抱いた節も、明るい笑顔。はつは藍之助に「あんたは、立派なお商売人に、なりなはれ。」と、言った。
養之助も「
せや。」と、言って立ち上がり、「行ってええのやで、お兄ちゃん。お互い、ええとこ、お父ちゃんに見せちゃあろ。」と、言った。泣きそうな顔の藍之助。はつがにっこり微笑んで、「そうだす。みんな、あんたがやりたい事に向こで頑張ってほしいて、そう、願(ねご)てます。
うちもや。」と、言った。ここに、必要だとは言ってもらえず、どっちつかずで情けない顔の藍之助。はつは。うしろを振り返り「なぁ? 旦那様。」と、白木のお位牌を見て言った。藍之助、養之助もはつの目線の先を見た。位牌の前に、みかんが1つ、お供えしてある。

 

白岡家。出産間近になり、実家に戻っている千代。

ダイニングで椅子に腰掛け、大きくなったお腹をなでながら、「うち、子どものためにも、いつかは、緑の森に囲まれたとこで、暮らしてみたいわ。」と、夢を語る。うめがにこにことうなずいて、「それも、よろしおますなぁ。」と、言った。

ティーカップをかき回している新次郎が、「それやったら、芦屋(あしや)辺り、ええのと違いますか?」と、提案。千代は、「はぁ、芦屋なぁ。」と、イメージしてみる。
皿の上にスプーンを置いた新次郎は「せや。あの外国のお方やったら、いつか、日本と西洋の両方のええとこ生かした家、建ててくれるかも分かりまへんな。」と、言った。
千代は「はぁ…、ええなぁ。」と、微笑んだ。直後にお腹を気にしながら「ええけど…。ウッ。おなか、痛い。」と、辛そうな顔になった。新次郎が目を丸くし、「へ?」と、飲みかけのカップを置いた。
うめが「お千代様? お千代様!?」と、様子を確認する。新次郎が「ああ…、千代!」と、言って、席を立った。


日の出女子大学校の教室で、教壇に立つあさ。

「え~。本日は、成澤先生が、皆さんの前で、お話をと言うてくれはりましたので、一つ、お話し、さしてもらお、思います。先週出ました、この新聞の記事読みましたか?」と、新聞をみんなの前にかざす。後方の壁に成澤・絹田・亀助が、あさの講演の様子を、並んで参観中。

「東京で学ぶ女子学生が、このような書かれ方をしてる事は、私は、心外でなりません。この大学校に、ここにあるような、堕落した学生がいてるやなんて、決して思いませんけど。それでも、ここで学ぶ者は、己の行いに、もっと深う、責任持たな、あかんのだす。<ああ、女子大学校なんて、あない立派な建物や、理想を持ってても、ちょっとも、実が上がれへんのやなぁ。やっぱり女子高等教育なんて、意味ないなぁ>やなんて、思われたら、決して、あかんのだす。」真剣にあさの話に聞き入っている宜の右隣の女学生(大島優子)が、小声で「話、長いなぁ。」と、迷惑そうにぼやいた。あさを批判した女学生をじろじろと眺める宜。

あさは「成澤先生も、絹田先生も、女子教育のために、身を犠牲にして働いてくれはりました。」後ろにいる成澤、絹田が照れながら、同時に前髪をかきあげる。亀助がちらりと2人を見た。もっとも、絹田には、かき分ける前髪はないけれど。

あさは「私が望む事は、誠実に日々を過ごし、勉学にいそしむ事だす。あなた方の行い一つで、たちまち世間からの信用、落とす事を、お忘れになりまへんよう!」と、締めくくる。

宜たち、多くの女学生がこくりとうなずく中、隣の女学生だけは「フッ。いけ好かない傲慢(ごうまん)おばさんですこと。」と、小声で、あさを批判した。がじろりと失礼な発言を連発する女学生をにらんだ。その女学生は、横からのにらみなどは無関心で、壇上のあさをじっとまっすぐに見つめている。

 

ナレーション:この学生の名前は、平塚明(はる)。
のちの、平塚らいてうです。


廊下で成澤に頭を下げるあさ。亀助が、成澤の左隣に立っている。教室から女学生が数名退出し、次の授業へ移動していく。
あさは「すんまへん。ちょっとも、一つやあれしまへなんだなぁ。」と、話が長くなった事を詫びた。成澤は「いいや。感謝しています。女子学生を前に、あれだけ、はっきり、ものが言える女性は、あなたしかいません。」と、大いに満足げ。
亀助は「そやけど、あない、ズバズバ言うてたら、若い子達に、嫌われてしまいまへんやろか?」と、意見した。あさも少しは気になるようで、目を伏せ気味に「うちは、別に、自分が好かれようが、嫌われようが、かましまへんのだす。うちは、ただ、せっかく出来た、この大学校やその学生を、もっと世間に認めてもらいたいだけなんだす。」と、微笑んだ。にっこり笑顔で、ウンウンと声を出さず、うなずく成澤。そこへ、宜がバタバタと「あさ先生! 今、教務科に電話があって。千代ちゃんが!」と、息を切らしながら、報告に駆けて来た。

あさは、目を見開いて「ん?」と注目。

白岡家。用意された布団の枕元に、よのが作った犬の張子人形が置いてある。

※安産祈願の意味合いがある

新次郎が「ゆっくりな。」と、声をかける。
浴衣(寝間着)に着替えた千代は、はあはあ、陣痛の痛みに、荒い息遣いをしながら、布団に横になり「 どないしよ…。予定より、まだ10日も早いのに。」と、不安がる。千代の背中をさすっていたわる、うめ。新次郎は「予定日やなんて、気にせんかて、よろし。昔なんかなぁ、いつ生まれるか、ちょっとも、分からへんかったんやさかい。」と、いつもの様子で、語り、なだめる。うめも「そうだす、そうだす。」と、うなずく。
千代もうなずくが、陣痛の痛みに「ん~…。」と、顔をしかめ、苦しがる。

翌朝。まだ、薄暗く、鶏の鳴き声が響き渡る中、旅行鞄を抱え、
亀助が「ああ、えらいこっちゃ。」あさも「えらいこっちゃ。」と言いながら、駅から全力疾走で、加野屋へ急ぐ。
亀助が「えらいこっちゃ。」と、言い、
あさも「あ~、えらいこっちゃ。」と、言いながら、家路を急ぐ。


加野屋似到着し、バタバタ家の中を走り、啓介の姿を見つけたあさは、バタバタ手をちょっとちょっとと、振りながら「あっ! 千代は、どない!?」と、尋ねた。啓介が「お母さん。それが、まだ…。」と、答えた。新次郎やうめも、昨日からの長時間の陣痛で、千代の体力・気力が持つか不安げ。泣きそうになる、あさ。その時!!
おぎゃー!おぎゃー!
と、元気な産声。うめが「生まれた!」と、目を見開いて、安堵する。あさも「はぁ、よかった! やりましたなぁ!」と、興奮。新次郎が「おめでとうさん。」と、父親になった啓介に言い、啓介もうれし涙の中、「ありがとうございます!ありがとうございます!」と、頭を下げる。亀助が「おめでとうございます。」と、言った。泣き笑いするあさ。うなずいているうめ。口を結び、うれし涙をこらえる新次郎。

初孫を抱き、微笑むあさ。うしろに、腰を曲げ、赤ちゃんを見て微笑む新次郎。横で、自分の子どもを見て、
啓介が「小さいなぁ。」と、にこにこ。あさの隣に座っているうめが「そやけど、元気な女の子だすなぁ。」と、言った。みんなが赤ちゃんに夢中。
新次郎が「あさ。啓介さんに、抱かしたげ。」と、言った。自分が父親になった時、なかなか自分の子を抱く順番が来なかった事があったためか、心遣いをみせる新次郎。
あさは「へぇ。啓介さん。ここな、ここ。」と、注意をうながしながら、赤ちゃんを啓介の腕に移動させる。啓介の後ろに新次郎が回りこみ、「ここや、ここ。ほれ、頭な。」と、産まれたばかりの子どもの抱き方を指導。自分の子を見て、満面の笑みの啓介。出産を終え、くたびれている千代が、その光景を目を細めて見守っている。あさが「千代。よう、頑張りましたなぁ。」と、ねぎらう。千代は「はぁ、お母ちゃん。」と、呼びかけた。あさが「ん?」と、言うと、千代は「こら、ほんま、えらい事だす。よう、うち、産んでくれはりましたなぁ
。」と、しみじみ言った。

ようやく、自分が妊娠・出産を体感したことで、完全に、あさへのゆがんだ感情が解消されたようだ。
あさは、くすっと笑い、「ようよう、分かりましたか。そやけどなぁ、ほんまに、えらい事なんは、これからだす。」と、釘を刺した。千代が「あ…、ハハハ。」と、笑った。
啓介が「お父さん、どうぞ。」と、赤ちゃんを抱く順番を新次郎へバトンタッチ。
新次郎は「ああ。」と、慎重に赤ちゃんを抱き、顔を見て「はぁ…。」と、感動。「ありがたいなぁ。なんて美しいのや。」と、ニコニコ。一同、微笑みながら、見守る。

その時、突然、ザーッと本降りの雨音が聞こえてきた。
あさが上を見上げ「ああ…。」と、微笑む。千代が「ん?」と、母の様子を気にする。
あさは「フフッ。また、雨や。」と、新次郎に笑顔で話しかけた。
新次郎も「ほんまやな。」と、言って、初孫の顔を見て微笑む。あさは、そんな新次郎を見て、幸せそうに微笑む。

雨に濡れる白岡家の中庭。60歳を過ぎても、うれしいことがあれば、雨が降るという、新次郎のジンクスは健在のようだ。

役員室で会議中のあさ達。
榮三郎が「三ツ割制度?」と、聞き返した。
平十郎が「あの、近江商人の、伊藤さんが実行した制度ですね?」と、言った。
あさが「そうだす。その制度やったら、利益が直接、お給金に響きます。店の者も、経営の一端を担(にな)う覚悟が、増すやろ、思て。」と、その制度の採用を提案する。
榮三郎は、腕組みし、「う~ん。そら、励みにもなりますわな。」と、言った。平十郎もうなずく。
「いや、お姉さん。孫まで生まれたいうのに、よう、働きますなぁ。」と、感心する榮三郎。
あさは「いや、ほんまは、ず~っと、見てたいんだすけどなぁ。」と、言った。会議のテーブルにはつかず、資料をめくっていた啓介が「今は、代わりに、お父さんが、ず~っと面倒を見ながら、名前を考えてくれてます。」と、言って、三人に資料を配布する。
榮三郎は「アハハ! お兄ちゃんらしいわ。」と、笑った。
あさが「こら、何だす?」と、啓介が配った資料について、目を通しながら言った。啓介があさの隣の席についた。
平十郎は「へぇ。お医者さんに作って頂きました。病気の初期症状には、こういうものがある。
保険に入る前には、きちんとお医者さんに、診てもらわな、あかん、いうて。」と説明。

資料に目を通したあさは、その中に<食欲不振 味覚障害>の項目があることに、注目。

昨年からの新次郎の様子を思い返す。

(回想シーン)
三味線の手入れ中の新次郎
に、「今日の朝も、あんまり、食べてはれへんかったみたいだすし…。」と、話す、あさ。

お茶を口にし、「お茶の香りがなぁ、何や、こう…、ちょっと、違てますのや。」と、告白した新次郎。

新次郎の身体を心配し、考え込むあさ。

 

白岡家、座敷。

半紙に1つ1つ女の子の名前を書き、考え込んでいる新次郎。いくつも書いた中で、右手に<光子>左手に<千穂>と書いた半紙を握り、決めかね、他に書いた名前と見比べていると、あさがやって来た。
新次郎が「おお、あさ。」と、言った。書き上げた半紙を拾い集める新次郎。
あさは真剣な顔で、新次郎の前に正座。「旦那様。」と、声をかけた。新次郎が顔を上げ、あさを見る。あさは、新次郎をまっすぐ見つめ、真剣に「
うちと一緒に、病院、行っとくなはれ。」と、言った。廊下に赤ちゃんを抱いた千代が来たが、部屋の中の張り詰めた空気に、思わず、廊下で立ち止まり、様子をうかがう。「どうか、お願いします。」と、あさは両手をついて、頭を下げ、お願いした。その様子を見て、新次郎もついに観念。「うん…。分かった。」と、半紙を床に置き、「ほんなら、行こか。」と、穏やかに言った。廊下で不安そうに見ている千代。新次郎を見つめ、こくこくと無言でうなずく、あさ。

 

最終週へつづく。

 

※最終週、26週「柔らかい心」

白岡家の集合写真撮影会。

平十郎と美和の恋の行方は?

雁助がまた、白岡家訪問、うめと楽しそうに雑談。

あさに反抗的な女学生は?

新次郎の体調は?

あさはついに商売から手を引く宣言を。

 

※平塚 らいてう(ひらつか らいちょう)

思想家、作家。昭和46年没。

1911年(明治44年)、平塚25歳の時、雑誌「青鞜」発刊を祝い、自らが寄せた文章の表題『元始、女性は太陽であった』は、女性の権利獲得運動を象徴する言葉の一つとして、有名。日本女子大学卒業後も、津田塾などいくつかの学校で学び、明治41年恋仲の男性と心中未遂事件を起こし、塩原から日光に抜ける山中で救助され、世間にその名が知れわたった。

 

※三ツ割制度

明治8年、近江商人伊藤忠兵衛氏が、店の純利益を、本家納め(今で言う、株主配当的な?)、店積み立て、店員配当(今で言う、賞与的な?)に均等に三分割して処分するという制度を定めた。

 

※開運保険(大同生命の説明引用)

合併した、旧、護国生命から継承した保険商品。

・満期のときに限り、保険金を支払
・満期前に被保険者が亡くなられたときは、以後の保険料払込を免除
・保険料の払込期間は、全期払込のほか、10年・15年・20年・25年等の短期払込がある

という、特徴だったそうです。

 

 

※藍之助。長男キャラらしいと言ってしまえばそれまでだけど、ダメだ~。いらつく。

最初っから「長男」だなんて分かりきってて、家族が亡くなっていき、人手がだんだん足りなくなっていたのも分かってて。今更、<やっていかれへんやろ?>って?

あんな、思いつめた顔で、長男だから、やはり自分が、この家継いで、ひっぱっていかなあかんとか、迷惑きわまりない。

だんだん人出不足になって行く事は、目に見えていたのに、みかん山に人生注ぐのを嫌がって、商売の道を選んだくせに、と、どうしても、長男のええ格好しいにしかみえない。

はつ・惣兵衛は、藍之助が、心残りを抱えたまま、みかんの仕事をする事には、悩んでましたから、家庭の事情で、都合よく退職したり、簡単に復帰したりは、もう止めてほしいですね。

誰かが、危篤の連絡届くたび、思いつめてますが、いつも、自分で和歌山帰るかどうかも、決めかねてるみたいで、甘ったれに見える。はつの言葉通り、惣兵衛さんのように、自分の道を見つけたのなら、ええ人生やったと言って終われる様、励んで欲しいものです。